親なきあと
親なきあと問題
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*書きかけです。セミナー講師をさせていただく時の資料に、少しずつ話す内容を付け加えて行こうと思います(完成形をUPしたいのですが、時間がかかりそうなので逐次UPしていきます)
*まずは「伝える」「知ってもらう」ことに重きを置いているセミナー用で、分かりやすくするために「法律をかみ砕いて」いますので、そこのところはご了承ください(専門的な突っ込みはご勘弁!)
親なきあと問題のために今のうちに知って欲しいこと
「親なきあと」問題
親が、障害のある子(身体的、精神的、知的など)より、先に亡くなったあとや、面倒を見ることができなくなったあとに、どのようにしてその子が幸せな人生を送れるようにサポートできるか!!
*死んでしまった「あと」のことだけでなく、亡くなる「前」も含んでます!!
A 財産の確保・管理・行き先のこと
・子の将来にわたる生活費の確保が可能か
*障害者年金などの年金、親の遺産など
・長期にわたり資金計画を立て財産管理できるか
・資産が残る場合の最終的な財産の行方は
*その子に推定相続人が存在しない場合で、障害によりその子に遺言を書く能力がない場合は、残った財産は国庫に帰属(没収)します
B 生活の拠点のこと
・在宅による医療、介護サービス
・施設通所、入所
C 日々の生活や身の回りのこと
・人生の質を高め、幸福な生活を送って欲しいという、本人及び親の願い
・社会との接点を持ち、本人の特性を知ってもらうこと
・顔見知りの人たちを作っておくことで、困ったときに助けてくれたり、手伝ってくれたりすることもある
D 支える親族等のこと
・支える親族等の不安や苦労へ
「親あるあいだ」の準備、対策が大切
・親の「からだ」 が 元気 or きつい or 動けない
・親の「意思能力」 が 衰退 or 喪失
遺 言 単独行為(契約ではない)
☆意思能力のある方の行為
☆効力発生は死亡時のみ
普通方式(3種類)
・自筆証書遺言 ・公正証書遺言 ・秘密証書遺言
<自筆証書遺言>
本人が、本文の全文・日付・氏名を自筆で書いた書面に捺印したもの
<公正証書遺言>
1.公正証書遺言は、遺言者本人が公証役場に出向き、証人2人以上の立会いのもとで、遺言の内容を話し、公証人が筆記します。
2.公証人は、記録した文章を本人と証人に読み聞かせたり、閲覧させたりして筆記の正確さを確認し、それぞれの署名・捺印を求めます。
3.公正証書遺言の形式に従って作成した旨を公証人が記載し、署名捺印して完成
*言葉の不自由な人や耳の不自由な人の場合は、通訳を介して遺言を作成可能
自筆証書遺言と公正証書遺言の比較
|
公正証書遺言 |
自筆証書遺言 |
メ リ ッ ト |
・家庭裁判所での検認手続が不要 ・死後すぐに遺言の内容を実行できる ・紛失・変造の心配がない (公証役場で保管) |
・手軽でいつでもどこでも書ける ・費用がかからない ・誰にも知られずに作成できる |
デ メ リ ッ ト |
・費用がかかる ・証人が必要 ※成年者であることが必要 ※下記の方は証人になれない 推定相続人、その配偶者、直系血族等 |
・不明確な内容になりがち ・形式の不備で無効になりやすい ・紛失や偽造・変造、隠匿のおそれ ・家庭裁判所での検認手続が必要 |
負担付遺贈 単独行為(契約ではない)
☆意思能力のある方が契約
☆効力発生は死亡時
「障害のある子の面倒を見てくれるのなら、私の財産○○をあげます」などのように、財産をあげる見返りとして、受遺者に、一定の義務を負担してもらうことで、遺言の方式により行う
*受遺者(もらう人)は、もらう財産の価値以上の義務を負う必要はない
*その子の面倒を見ない(負担義務を履行しない)場合は、相続人は、相当期間を定めて履行を催告することが可能
*受遺者は、義務を負担することが嫌であれば、遺贈を受けない(放棄)することも可能
贈与(生前贈与) 契約
☆意思能力のある方が契約
自己の財産を、無償で相手方に与える意思を伝え(書面を必要としない)、相手方が受諾することによって、成立する契約
*相手方に権利が移転するのは、原則は契約が成立した時だが「○○した場合」など効力を生じる条件を付けることも可能
贈与(死因贈与契約) 契約
☆意思能力のある方が契約
☆効力発生は死亡時
「贈与者の死亡によってその効力を生じる」という条件をつけ、贈与する人と贈与を受ける人とが契約したものが死因贈与で、これに負担を付したものが負担付死因贈与
「負担付」というのは、贈与をする方が、贈与を受ける方に、何らかの義務・負担(「今後の身の回りの世話を続けて欲しい」「同居して面倒を見て欲しい」など)を強いること
*負担のない死因贈与契約の場合は、これもいつでも解除が可能
*負担が全部または一部履行された場合は、原則として解除すること不可
法定後見制度
☆意思能力の不十分な方のみ利用可能で、死亡により終了
*身体に障害のある方や、ニート、浪費者は利用できない!!
本人の判断能力の程度に応じて、次の3つのタイプ分類
「補助」 判断能力が不十分である
「保佐」 判断能力が著しく不十分である
「後見」 ほとんど判断することができない
精神上の障害による判断能力が不十分なために、財産侵害を受けたり、人間としての尊厳が損なわれないように、法律面や生活面で支援する身近な仕組み
「身上監護」「財産管理」が主な業務
〈身上監護〉
生活、療養看護に関する事務のことで、介護のような事実行為ではなく、介護契約や介護施設への入所契約などのこと
・医療に関する契約や支払に関すること全般
・介護等に関する契約(要介護の請求認定・不服申立・サービスの契約等)
・住まいに関する契約
・施設に関する契約
・教育やリハビリに関する契約
×事実行為
例:買物・掃除・洗濯等の身の回りの世話・外出の付添・送迎・荷物の運搬等
×入院の強制・施設入所の強制・介護の強制・リハビリの強制等や臓器移植の同意
×葬式・身元保証
〈財産管理〉
本人に代わって「すべて」の財産を管理すること
・金融機関と取引
・不動産などの維持・管理・保存・処分
・日常生活での金銭管理(家賃・社会保険料・税金の支払い)
・本人に必要な衣類や生活用品の購入
・確定申告、納税
・その他の財産の維持・管理・処分
×贈与や寄付行為 ×親族に対する介護料等の支払い
×投資や投機取引 ×相続税対策 ×利益相反行為
任意後見制度
☆意思能力のある方が契約
☆意思能力が不十分になり、任意後見監督人が選任されてから効力が発生し、死亡により終了
判断能力がなくなったときに備えて、判断能力があるうちに、自分の世話をしてくれる人(後見人)、お世話の内容を決めておくという制度
将来自分の判断能力が不十分になったときの後見事務の内容と、本人があらかじめ選任しておいた任意後見人を、公正証書で決めておく制度で、家庭裁判所が選任した任意後見監督人が、任意後見人をきちんと仕事をしているかチェックする
なお、任意後見契約においては、任意後見人を誰にするか、どこまでの後見事務を委任するかは話し合いで自由に決定することが可能
<任意後見のメリット>
○今現在、本人に判断能力の低下がなくても利用することができること
○自分の信頼できる人に後見人を依頼することができること
○どこまでを後見人に依頼するかを柔軟に決めることができること
○契約内容が登記されるので任意後見人の地位が公的に証明されること
○家庭裁判所で任意後見監督人が選出されるので、任意後見人の仕事ぶりをチェックできること
<任意後見のデメリット>
×死後の処理を委任することが出来ない
×法定後見制度のような取消権や同意権がない
×財産管理委任契約に比べ、迅速性に欠ける
×本人の判断能力の低下前に契約は出来るが、判断能力が低下して効力が生じるまで、実際に管理に着手出来ない
×後見人の報酬に併せて、後見監督人の報酬もかかる
委任契約(財産管理委任契約)
☆意思能力のある方が契約
☆契約をしていても、本人が認知症等により意思能力が衰えた場合、対応困難
・当事者間の合意のみで効力が生じる
・内容を自由に定めることが出来る
<財産管理委任契約のメリット>
○判断能力が不十分とはいえない場合でも利用できる
○開始時期や内容を自由に決められる
<財産管理委任契約のデメリット>
×任意後見契約と異なり、公正証書が作成されるわけではなく、後見登記もされないため、社会的信用が十分とはいえない
×委任された人をチェックすることが難しい
×成年後見制度のような取消権はない
死後事務委任契約
☆意思能力のある方が契約
☆効力発生は死亡時
葬儀や埋葬に関する事務を委託する契約のことで、委任者が受任者に対し、自分の葬儀や埋葬に関する事務についての代理権を与え、死後の事務を委託する委任契約のこと
*遺言で葬儀や法要のやり方を指定しても、法的強制力はなし
家族信託(民事信託)
☆意思能力のある方が契約
☆効力はどの段階でも可能
~家族信託のメリット~
①親が元気な時から判断能力喪失時、亡くなった後まで、財産管理を継続できる
②信託された財産は、成年後見人の管理下におかれず、受託者が破産した場合でも、信託財産は、法的に保護されます
③金銭・自宅・収益物件不動産等、あらゆる財産を対象にし、信託財産にするかは自由に選択できます
④信託開始に、裁判所の手続は不要。受益者になる子の権利権限に制限がない
⑤受益者が重度の知的障害のある子の場合、受益者代理人を置き、子を守ります
⑥委託者の想いを「次の次」など、継続して託することができる
事例①
事例②
~お役立ち豆知識集~
【法定相続】
法定相続の順位割合
順 位 |
法定相続人 |
割 合 |
1 |
子と配偶者 |
子=1/2 配偶者=1/2 |
2 |
直系尊属と配偶者 |
直系尊属=1/3 配偶者=2/3 |
3 |
兄弟姉妹と配偶者 |
兄弟姉妹=1/4 配偶者=3/4 |
*配偶者は常に相続人となります
*直系尊属は、子がいない場合の相続人となります
*兄弟姉妹は、子と直系尊属がいない場合の相続人となります
【遺留分】
相続人に最低限保証されている相続分のことで、遺言があったために侵害された場合に請求できる権利(遺留分減殺請求)のこと
・直系尊属のみが相続人である場合 被相続人の財産の3分の1
・それ以外の場合 被相続人の財産の2分の1
*兄弟姉妹にはこの遺留分はありません
【遺産分割協議】
・「遺言がない場合」や「法定相続によらない」場合に必要
・必ず相続人全員で行い、実印で押印し、印鑑証明書を添付する。
*「全員」なので、相続人に意思表示することが出来ない障害のある子や認知症の人がいる場合でも、それらの人々を、遺産分割協議から除外することができない
糸島の司法書士事務所 司法書士柳橋儀博
家族信託・民事信託・福祉型家族信託
【相続税】
・基礎控除額 = 3000万円+( 600万円 × 法定相続人の数 )
*遺産の評価額が基礎控除の金額以下であれば相続税は課税されず、税務署に対する申告も必要ありません
*評価額が基礎控除を超える場合でも、税務上の特例(配偶者控除、小規模宅地の評価減)により、相続税がかからないケースもあります
【特定贈与信託】 *商事信託
特定贈与信託は、特定障害者(重度の心身障がい者、中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障がい者等)の方の生活の安定を図ることを目的に、そのご親族等が金銭等の財産を信託銀行等に信託するもの
信託銀行等は、信託された財産を管理・運用し、特定障害者の方の生活費や医療費として定期的に金銭を交付
特別障害者(重度の心身障がい者)の方については6000万円
特別障害者以外の特定障害者(中軽度の知的障がい者および障害等級2級または3級の精神障がい者等)の方については3000万円
を限度として贈与税が非課税となる
基本の仕組みは
① 障害者の父母などがまとまった額の金銭を信託
② 信託銀行などが管理・運用して、障害者本人の預貯金口座に定期的に少額ずつ振り込む
*信託される財産は金銭、有価証券、金銭債権および一定の要件を満たす不動産に限られている